理学療法学生の臨床実習(CCS)にコーチングが必要な理由:学生の「言語化」を促す対話の力

私は、理学療法士として20年、12,000以上のリハビリに携わりながら、現在はプロフェッショナルコーチ、そして研修講師として、医療・介護現場の人材育成や組織づくりのサポートをしています。

普段、多くの病院や施設、養成校に関わらせていただく中で、養成学校の先生方や、実習指導者(バイザー)の皆さんが「もっと良い指導をしたい」「学生さんの可能性を伸ばしてあげたい」と、本当に熱い想いを持って試行錯誤されている姿をたくさん目にしてきました。

リハビリ養成学校での講義の様子↓
多様性の理解から始めるコミュニケーション教育
リハビリ養成校での理学療法士キャリア教育

そんな熱意溢れる現場だからこそ、これからの新しい臨床実習(診療参加型実習:CCS)において、「コーチング」の視点と対話が、さらに大きな価値を生み出す鍵があると感じています。

実習の現場にコーチングが加わることで、学生も、指導者の皆さんも、そして患者さんも、みんなが豊かになっていく未来について、こちらのコラムで紹介させてください。


実習を「共創の場」に変えていく

厚生労働省のガイドライン改定により、実習は「診療参加型実習(CCS)」へと大きく舵を切りました。(公益社団法人 日本理学療法士協会のホームページに記載されている、臨床実習教育の手引きはこちら。)

CCSの本質は、学生さんを単なる見学者や評価の対象にするのではなく、「医療チームの一員(見習い)」として温かく迎え入れ、共に臨床の価値を作っていくことです。

ここで大いに活きるのが、知識を伝える「ティーチング」だけでなく、相手の可能性を信じて引き出す「コーチング」の関わりです。

「これを教えなきゃ」「失敗させないようにしなきゃ」という守りの意識から一歩進んで、「どうすればこの学生が、目の前の患者さんと最高の関わりを作れるだろう?」という“善を成す”ための対話を始めていく。

コーチングのエッセンスを取り入れることで、より良い関わりについて考えるキッカケを創ることができます。

そして、それらが、これからの臨床実習をより豊かでクリエイティブな時間に変えるエンジンになります。


視点を少し変えるだけで、学生の主体性が輝き出す

実習の中で、学生が緊張してしまったり、うまく言葉が出てこなかったりする場面に出会うこともあるかもしれません。

しかし、学生の頭の中には、かなりの気づきや視点が必ず眠っています。それをただ「教える」だけではなく、問いかけによって学生の「言語化」を促すことこそが、指導者に求められる大切な役割です。

プロコーチの視点からおすすめしたいのが、「問いかけの角度を、ほんの少し未来やポジティブな方向へシフトする」という方法です。

例えば、「さっきの評価、どこがダメだったと思う?」と課題を探す(悪を避ける)アプローチではなく、こんな風に問いかけてみます。

💡 問いかけの具体例

  • 「さっき、患者さんがすごく嬉しそうな表情をされた瞬間があったよね。どんな関わりが自分の中では良かったと思う?」
  • 「明日のアプローチで、もっと良くできそうな部分はどこかな?」

問いの目的を「正解を当てさせること」から、「学生自身の素晴らしい気づきや、次への意欲を引き出すこと」に変える。

自らの言葉で臨床を語れるようになったとき、学生の脳内は安心感で満たされ、「もっと学びたい!」「もっと患者さんの力になりたい!」という本来のエネルギーが自然と湧き上がってきます。


指導者自身の「あり方」と「自分の状態」が、最高の環境を作る

私はコーチングにおいて、テクニック以上に、指導者自身の「あり方(どのような姿勢で相手と関わるか)」を何より大切にしています。

実習に関わる指導者の皆さんが、まずはご自身の心のゆとりや体調といった「自分の状態」をしっかりと調え、心に豊かな余白を持っていること。

そして、「この学生は、どんな強みや可能性を秘めているんだろう?」という純粋な好奇心とリスペクトの目で見つめること。

指導者自身の「自分の状態」が良く、安定していることそのものが、学生との関係性や、現場に最高の心理的安全性をもたらします。

実習とは、決して「大変な業務」ではなく、「学生と共に、目の前の患者さんの未来を良くしていく、とても価値ある場」なのだと感じています。


関わるすべての人に笑顔が広がる実習へ

学生の可能性が開花していくプロセスを間近で応援することは、指導者自身の「後輩育成の力」や「チームを引っ張るマネジメント能力」を大きく引き上げる、最高の成長の機会でもあります。

何かを恐れたり、問題が起きないように守ったりする実習ではなく、関わるみんなで知恵を出し合い、より良い臨床の未来を一緒に作っていく。

そんな「善を成す」ための実習指導のヒントとして、今後のコラムでも具体的な「聴き方」「問いかけ方」、そして「指導者自身の心の調え方」について、私のコーチ、研修講師としての実践を交えてお伝えしていきます。

現場で奮闘する皆さんと、未来の理学療法士である学生の毎日に、たくさんの良い対話が生まれることを応援しています。


臨床実習指導に関するご相談・お問い合わせ

「うちの施設でも、臨床実習指導にコーチングの要素を取り入れたい」
「スタッフ向けの講習や、養成校でのサポートについて詳しく知りたい」

という方は、どうぞお気軽にご相談ください。

現場の課題や目指したい未来に合わせ、共に最適な関わり方を考えていきましょう。

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山田真伸

執筆者:山田 真伸

Be a Smile代表/一般社団法人 Life is 理事

研修講師・理学療法士・プロコーチ

医療・介護・リハビリテーション分野で、人材育成と組織づくりを支援。
臨床20年以上(12,000人以上)、年間80件以上の研修・講義を実施。専門誌への寄稿・執筆も行う。

理念は、成長と幸せの輪を対話で広げること。

【保有資格等】
・国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ
・Gallup認定ストレングスコーチ
・理学療法士

  • 医療・介護事業所向け研修
  • リハビリテーション養成校向け講義
  • リハ専門職向けコーチング(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)
  • リーダー・管理職向け対話支援/1on1支援
  • 専門誌への寄稿・執筆(多職種連携・人材育成・コーチング・レジリエンスなど)

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