マネジメントに活かすコーチングスキル~信頼関係を築くための「傾聴」と「承認」の実践~

話を聴いて認めることの大切さ

管理者やリーダーとして、スタッフの成長やチームの成果を支える役割を担う中で、日々多くの課題に直面することでしょう。中でも、「スタッフが思うように動いてくれない」「やる気が感じられない」といった悩みは、コミュニケーション不足や信頼関係の欠如が原因であることが多いものです。

組織目標を達成するには、クーンツとオドンネルが定義した「他者を通じて物事を成し遂げる(Getting things done through others)」が求められますが、それを実現するには、まずスタッフ一人ひとりと信頼関係を築くことが欠かせません。

そのために必要なことが、**話を聴く「傾聴」**と、**相手を認める「承認」**という2つのコーチングスキルです。


傾聴(Active Listening):相手の本音を引き出す

傾聴とは、相手の話に耳を傾け、内容だけでなく、その背後にある感情や意図まで理解しようとする態度を指します。管理者としての忙しい日々の中でも、意識的に傾聴を実践することで、スタッフが「自分は大切にされている」と感じるようになり、自然と信頼感が生まれます。

傾聴のポイント

  1. 話を最後まで聴く
    途中で口を挟まず、スタッフが思いをすべて伝えられるようにする。
  2. 相手の感情に寄り添う
    「その気持ち、わかります」といった共感の言葉を伝える。
  3. 言葉を繰り返して確認する
    「つまり、○○が難しいと感じているんですね」と、相手の話を要約する。

具体例:
スタッフが「最近仕事がきついです」と言ったとき、
「大変そうですね。どの部分が一番負担に感じていますか?」と質問しながら、相手の感情を受け止める。

傾聴は、相手の本音を引き出すだけでなく、信頼関係の構築にも直結するスキルです。


承認(Acknowledgment):相手の価値を伝える

承認とは、相手の存在や行動、変化を認め、その価値を伝えることです。ここでは、**「結果承認」「変化承認」「存在承認」**の3つの種類を解説します。

① 結果承認:成果を認める

スタッフが達成した具体的な成果や結果を認めることです。
例:
「○○さんが作成した資料、非常にわかりやすかったです。おかげでミーティングがスムーズに進みました。」

結果承認は、スタッフの努力が組織に貢献していることを実感させ、モチベーション向上につながります。

② 変化承認:成長を認める

過程の中での成長や変化を認めることです。結果に至らない場合でも、努力や試みを評価することが大切です。
例:
「前回よりも、患者さんへの説明がとても丁寧になっていますね。この調子で進めていきましょう。」

変化承認は、スタッフが「頑張りが見られている」と感じる機会を増やし、継続的な行動変化を促します。

③ 存在承認:その人の存在そのものを認める

結果や行動に関わらず、その人がいること自体に価値を見出し、それを伝えることです。
例:
「○○さんがいるだけで、チーム全体が明るくなります。いつもありがとう。」

存在承認は、他の2つの承認に先立つ「土台」として最も重要です。なぜなら、人は誰しも「自分が大切にされている」と感じることで、初めて行動や成果を出す意欲を持つからです。

承認を日常に取り入れるには

  • 小さな行動や変化を見逃さずにフィードバックする。
  • 「ありがとう」「助かっています」といった一言を習慣にする。
  • 結果や行動が目立たないスタッフにも、積極的に存在承認を行う。

承認の効果:
Gallupの調査によると、職場で「認められている」と感じるスタッフは、生産性や職務満足度が向上しやすいことが示されています(Gallup, 2019)。


傾聴と承認を日常に活かすために

これらのスキルは、忙しい現場の中でも、少しの意識で実践可能です。

  • 朝礼やミーティングでの一言:「最近の○○さんの工夫、素晴らしいですね。」
  • 日々の小さな対話:「大変なことがあれば、いつでも相談してくださいね。」
  • 個別面談での振り返り:「ここまでの成長を見て、本当に嬉しく思います。」

特に、忙しい中でも「存在承認」を大切にすることで、スタッフが「自分はここにいていい」と安心感を持ち、組織全体の一体感が生まれます。


まとめ

管理者やリーダーにとって、スタッフとの信頼関係を築くことは、目標達成のための最優先事項です。
そのために重要なのが、傾聴と承認。特に、存在承認を土台に、結果や変化を認めることで、スタッフのやる気や能力を引き出し、チーム全体を成長へ導けるでしょう。

まずは、日々の小さな場面から、話を聴き、認めることを始めてみませんか?
その積み重ねが、大きな成果と信頼を生む第一歩になります。

参考文献:

  • Gallup, “How Managers Can Create a Culture of Recognition”, 2019
  • Emanuel, R., et al., “Active Listening and Its Positive Impact on Relationships”, 2015

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チームワークを強化する方法
スタッフ同士の信頼関係を築くコミュニケーション法を具体的に学びます。

コミュニケーションの基本原則
自分も相手も大切にするコミュニケーションのポイントを学びます。

アクティブリスニング(積極的傾聴)の練習
相手の話を深く理解し、的確に応答するスキルを習得します。

お問合せ先

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「Be a Smile」は、スタッフと利用者の幸せを繋ぐコミュニケーションの輪を広げます。

山田真伸

執筆者:山田 真伸

Be a Smile代表

研修講師
理学療法士
国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ
一般社団法人コーチングプラットフォーム認定コーチ
Gallup認定ストレングスコーチ

20年で12,000人のリハビリを担当する現役の理学療法士でありながら、病院・介護施設向けの企業研修110件以上、850時間以上の個別セッションの経験を持つコーチ。

  • 病院(リハ科)、介護(訪問看護、訪問リハ、通所リハ)事業所向け
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