医療・介護の現場では、看護師、介護職、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医師、管理栄養士、ケアマネジャーなど、多職種が関わりながら利用者の生活を支えています。そのため、チームの情報共有や意思決定を行う会議の場が重要になります。しかし、多職種が集まる会議は、立場や専門性の違いから意見が交錯し、まとまりのない議論になってしまうことも少なくありません。
こうした状況を改善し、効果的な話し合いを実現するために必要なのが「ファシリテーション力」です。本記事では、医療・介護系のスタッフが会議で発揮できるファシリテーションのポイントを解説します。
ファシリテーションとは?
ファシリテーションとは、会議や対話の場において、円滑に議論を進め、参加者の意見を引き出しながら、合意形成を促す技術や姿勢のことを指します。単に議事進行をするだけでなく、
- 参加者が安心して発言できる場を作る
- 多様な意見を引き出し、整理する
- 目的に沿った議論へ導く
といった役割を担うことが求められます。
多職種会議での課題
多職種会議では、以下のような課題が生じやすいです。
- 専門用語が飛び交い、理解が追いつかない
- それぞれの職種の専門用語が多く、共通認識を持つのが難しい。
- 一部の人が発言を独占し、議論が偏る
- 声の大きい人や役職のある人の意見に流されがち。
- 時間内に結論が出ない、または決まっても実行されない
- 話し合いがまとまらず、時間ばかりが過ぎる。
- 決まったことが現場に落とし込まれず、実効性がない。
- 参加者のモチベーションが低く、意見が出にくい
- 「どうせ意見を言っても変わらない」という雰囲気がある。
- コミュニケーションのズレが生じやすい
- 多職種が集まると、それぞれの視点や価値観の違いから、伝え方や受け取り方にズレが生じる。
- アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)によって、相手の意図を正しく理解できないことも。
これらの課題を解決するために、ファシリテーターの役割が重要になります。
ファシリテーションのポイント
会議の目的を明確にする
会議を始める前に「何のための会議か?」を共有し、目的を明確にしておくことが重要です。
- 目的が曖昧だと、話が拡散しやすくなる
- 目指すゴールを意識することで、議論の方向性が定まりやすい
具体的には、会議の冒頭で「今日の会議では○○について意見を出し、合意形成を目指します」と明確に伝えます。
『聴く』と『認める』で心理的安全性を高める
会議では、発言しやすい雰囲気を作ることが大切です。そのために、ファシリテーターは『聴く力』と『認める力』を発揮します。
- 『聴く力』: 相手の話を遮らず、うなずきや相槌を交えて聴く
- 『認める力』: 「それは大事な視点ですね」「ありがとうございます」と相手の意見を受け入れる
この2つが機能すると、参加者が安心して発言しやすくなり、会議が活性化します。また、このような環境が作られることで、心理的安全性が高まります。
心理的安全性とは、「この場で発言しても否定されない」「自分の意見を尊重してもらえる」という信頼感のことです。心理的安全性が保たれると、以下のような効果があります。
- 参加者が率直に意見を言えるようになり、より多様なアイデアが生まれる
- チーム内での協力が深まり、円滑な意思決定が可能になる
- 新しいチャレンジや改善の提案がしやすくなる
ズレは当たり前。その上で対話を大切にする
多職種間では、価値観や視点の違いからズレが生じるのは自然なことです。「ズレをなくす」ことを目指すのではなく、その違いを受け入れた上で、どのように対話を進めていくかが重要になります。
- ズレがあることで、新たな視点や気づきが生まれる
- お互いの前提を確認しながら、誤解を解消する
成功の循環モデルを意識する
会議の場では、異なる意見が出るのは当然のことです。しかし、相手を変えようとするのではなく、「私たちは、どのような関係を築けば、利用者のためになるのだろう?」という視点を持つことが大切です。
成功の循環モデルの観点から、
- 関係の質 を向上させる(信頼・尊重を深める)
- 思考の質 が高まる(新たなアイデアや選択肢が生まれる)
- 行動の質 が向上する(より良い取り組みができる)
- 結果の質 が向上する(利用者にとって最適なケアにつながる)
といった循環を意識することで、多職種会議の意義がより明確になります。
まとめ
多職種が集まる会議は、立場や専門性の違いから意見がまとまりにくい場面もあります。しかし、ファシリテーションの力を活用すれば、
- 参加者が安心して発言できる
- 意見を整理し、結論を導きやすくなる
- 決定事項が現場に反映されやすくなる
特に、心理的安全性を高め、成功の循環モデルを活用することで、多職種間の対話がより建設的なものになります。日々の会議や対話の場で、ぜひ意識して実践してみてください!
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