今回から、臨床実習で感じやすい不安や迷いについて、
全5回のシリーズで、私の体験談も入れながら、少しずつ整理していきます。
臨床実習で、不安になったことはありませんか。
私が理学療法士養成校の最終学年での臨床実習に出たときのことです。
最初の1週間で、患者さんの評価を行い、レポートを書く。
そして、フィードバックを受けながら、初期評価レポートを完成させていく。
本来はそういう流れでした。
しかし、私はそのイメージがまったく持てませんでした。
レポートを書いても、フィードバックが入り、修正が続く。
何が正解なのかも分からない。
そのうち、
「自分は、評価すらできていないのではないか」
「このまま、レポートも書けずに実習が終わるのではないか」
「患者さんの役に立てているのだろうか」
そんな思いが、頭の中をぐるぐる回るようになりました。
焦りと不安でいっぱいでした。
そして、次第に自信をなくしていきました。
ある日、私は実習を一度休み、担任の先生に会いに行きました。
相談室で、先生は何も言わずに缶コーヒーを差し出し、
「どうした?」
と声をかけてくれました。
私は、そのとき初めて、自分の気持ちを言葉にしました。
うまく話せたわけではありません。
ただ、不安や焦りをそのまま吐き出しました。
先生は、黙って聴いてくれました。
そして、私のレポートに目を通し、
「大丈夫。ここまで十分にやっている。」
と伝えてくれました。
そのときのことは、今でも覚えています。
「自分はダメだ」と思っていた中で、
そのままの自分を認めてもらえたこと。
そして、ただ一緒にいてくれたこと。
それが、とても嬉しかったのです。
当時の私は、
「自分はまだ足りない」
という感覚に強くとらわれていました。
今振り返ると、このような不安や自己評価の揺らぎは、
決して特別なものではなかったのかもしれません。
ちなみに、こうした感覚については、心理学の分野でもさまざまに研究されています。
その一つとして、「インポスター症候群」というテーマが扱われることもあります。
※ご自身に当てはめて考える必要はありませんが、
こうした感覚についての研究もありますので、参考までにご紹介します。
(参考)
Salari et al., 2025(BMC Psychology)
“Global prevalence of imposter syndrome in health service providers: a systematic review and meta-analysis.”
大切なのは、
こうした感覚は
誰にでも起こりうるものだということです。
そして、
それは「できていない」という証拠ではなく、
「向き合っている」からこそ生まれる感覚でもあります。
臨床実習は、決して簡単なものではありません。
だからこそ、
一人で抱え込まなくていい。
そう私は感じています。
あのときの私は、
先生との対話によって、少しずつ前を向くことができました。
そして今は、
対話を通して人の成長を支えることを仕事にしています。
今回のコラムが、これから臨床実習を迎える方や、
今まさに実習中の方にとって、
少しでも参考になれば嬉しいです。
次回は、
こうした「自分はまだ足りないのではないか」という感覚について、
もう少し別の角度から整理していきたいと思います。
本シリーズの内容は、
理学療法士養成校でのキャリア教育や、
臨床実習における学生支援、実習指導者研修などでもお伝えしています。
現場に合わせた形での講義・研修も可能ですので、
ご関心がありましたら、下記よりご相談ください。



