【今回の記事の要約】
医療介護現場で多職種連携をスムーズに進めるには、「聴く力」が欠かせません。本記事では、人の話を最後の「。」まで聴くことの重要性や、言葉の意味だけでない、非言語のメッセージを聞き分ける技術や、ペースに合わせた対応法など、現場で実践できる6つの聴く力を養うポイントをご紹介します。それぞれのポイントには具体的なコツも含めて解説し、患者ケアの質向上やチームの信頼関係構築につながる方法を探ります。今回の記事を読むと、医療介護従事者として「話を聞いてくれる人」として頼られる存在になれるはずです。
多職種から相談されやすい人になるための6つの聴く力のポイント
医療介護の現場では、さまざまな職種が連携して患者さんや利用者さんを支えています。その中で、多職種の仲間たちから相談を受けやすい人になることは、信頼関係を築くだけでなく、チーム全体のスムーズなコミュニケーションや、結果としてより良い質の高いケアにつながります。
今回は、医療介護の現場における、人の話を聴く際の6つのポイントをお伝えします。
ポイント①【人の話を最後「。」まで聴く】
このポイントは非常に基本的でありながら、多くの人が見落としがちな重要な要素です。
例えば、多職種が話している途中で、あなたが結論を予測して割り込んだり、話を奪ったりした経験はありませんか?実は、このような行為は、相手に「自分の話は重要ではない」「最後まで聞いてもらえない」という印象を与えて、相手があなたに「話したい」と思わなくなり、結果として大事な情報や、本音で話してくれなくなります。
話を最後の「。」まで聞き切るという姿勢を持つことで、話し手は「この人は本当に自分の話を聞いてくれる」と感じるようになります。これが多職種連携における信頼感の、最初のとても大事な第一歩です。
実践のコツ
・話している最中に相手の顔を見て、うなずきながら適切なタイミングで相槌を打つ。
・「最後まで聞こう」と自分に言い聞かせるマインドセットを持つ。
・話が終わった後、少し間をおいてから返事をすることで、相手の話を丁寧に受け止めていることを示す。
ポイント②【結論を先に予測して伝えない】
多忙な医療介護の現場では、どうしても効率を優先しがちです。その結果、多職種の話を最後まで聞かずに、「つまり、こういうことですよね?」と結論に先回りしてしまうことがあります。
しかし、この行動は、相手の気持ちを置き去りにする可能性があります。話し手は、自分の考えや感情を表現する時間が奪われ、場合によっては否定されたと感じるかもしれません。
解決策として、まずは相手の話をすべて聞いてから、「私の理解が正しければ…」と確認する形で返答から対話を丁寧に行うと、スムーズなやり取りが生まれ、多職種連携にも良い影響が生まれます。
実践のコツ
・「もしかして…」や「つまりこういうこと?」といった言葉を避け、相手の話を遮らない。
・自分の考えが先に出そうになったら深呼吸をして抑える。(心の中で3つ数えてみるなど)
・話を最後まで聞いた後で、自分の意見や結論を述べるタイミングを作る。
ポイント③【非言語のメッセージを聞き分ける】
皆さんの多くも実感しているように、実は、言葉そのものだけがコミュニケーションではありません。表情、声のトーン、姿勢など、非言語的な要素も含めて聞き取ることで、相手の本当の意図や感情に気付くことができます。
ここで役立つのが、心理学で知られる「メラビアンの法則」です。この法則では、コミュニケーションにおいて言語情報が占める割合はわずか7%であり、声のトーンや話し方が38%、表情や姿勢などの視覚情報が55%を占めるとされています。
*メラビアンの法則については、以前の記事でも詳細を説明しています↓
https://be-a-smile.com/coaching-gesture/
たとえば、相手が「大丈夫です」と言っていても、声が小さかったり、表情が暗かったりする場合、本心は「実は、助けて欲しい」と訴えている可能性があります。この辺りは、忙しい医療介護現場での多職種連携においては、かなり大切なポイントになってきます。
実践のコツ
・相手の表情や視線の動き、声の高低に注目する。
・違和感を覚えたら「今、何か気になっていることありますか?」などと問いかけてみる。
・相手の仕草やトーンをさりげなく真似ることを活用し、相手との一体感を高める。(それにより、相手の気持ちを理解することにも繋がる)
ポイント④【相手のペースに合わせて、必要に応じて繰り返す】
人はそれぞれ異なる話し方やスピードでコミュニケーションを取ります。相手のペースに合わせることは、相手に話しやすさを提供する大切なポイントです。
相手がゆっくり話すタイプなら、急かさず同じペースで応答する。逆に、テンポの速い人には、適度に繰り返しながら話を整理して進めると良いでしょう。
「なるほど、それでどうなったんですか?」と興味を示す言葉を添えると、相手はより安心して話を続けられるようになります。人は、自分に興味を持って話を聴いてくれる人に、心を開きやすくなります。
実践のコツ
・相手が話す速度やトーンに合わせて、自分の応答を調整する。
・「それで?」や「もっと聞かせて」といったフレーズを使い、相手がもっと話したくなる雰囲気をつくる。
・相手の言葉を繰り返しながら要約する際は、同じ意味を保ちつつ言葉を少し変えて反復する。
ポイント⑤【相手の話を要約したり、確認する】
話が長くなりそうな場合や、複雑な内容の場合には、相手の話が一旦落ち着くタイミングで、「今のお話しは、〇〇、こういうことですか?」と要約して確認することが有効です。
これにより、コミュニケーションの認識のズレを防ぐだけでなく、話し手が自分の考えを整理する助けにもなります。相手が「そう、それが言いたかったんです」と納得する場面が増えるでしょう。多職種連携においては、それぞれの専門職の使う言葉が違うため、こういったズレを少なくするために、そもそもの言葉の意味を確認することは大切なことです。
実践のコツ
・「つまり、こういうことで合っていますか?」と確認し、相手の意見や意図を整理する。(言い方が強く取られないように気を付ける)
・相手の言葉をそのまま繰り返すしながら、相手への共感と正確性を両立させる。
・確認の際は、語尾を柔らかくして「〜ということで良いですか?」と相手を尊重する姿勢を示す。
ポイント⑥【相手の話を促し、質問もする】
聴く力をさらに高めるには、ただ受動的に話を聴くだけでなく、適切な質問を投げかけることも重要です。
たとえば、「そのことに興味があるのですが、もう少し続きを教えていただけませんか?」といった具体的な会話を促進するような質問をすることで、相手が自分の考えをもっと話したくなるようサポートできます。
質問の種類には、話を広げる「オープンクエスチョン」と、内容を具体化する「クローズドクエスチョン」があります。それぞれを状況に応じて使い分けましょう。
実践のコツ
・「それはどういう経緯でそうなったんですか?」や「具体的にはどんなことを考えていましたか?」など、背景を尋ねる質問を用意する。
・相手が話している中で気になった言葉をピックアップして深掘りする。
・質問の合間に共感の言葉を挟むことで、会話の流れを円滑にする。
「聴く力」がもたらす3つの良い影響
ここでは、医療介護の現場での多職種連携において、「聴く力」がもたらす3つのメリットについて説明します。
自身への良い影響
・「〇〇さんは話を聞いてくれる」という信頼が生まれ、相談される機会が増えます。
・職場での評価が向上し、キャリアアップや新たな役割が与えられる可能性が広がります。
チームへの良い影響
・誤解や衝突が減り、スムーズな情報共有が可能になります。
・チーム全体の士気や連携が向上し、業務効率がアップします。
利用者への良い影響
・チーム間の連携強化により、患者ケアの質が向上します。
・利用者やその家族が安心感を持ち、信頼を寄せられる現場を作り出せます。
おわりに
医療介護の現場では、忙しさの中でも「聴く力」を意識することで、あなた自身の存在価値がより高まります。
「人の話を最後まで聴く」という基本を大切にしながら、非言語のメッセージを含めた総合的なコミュニケーションを実践することで、職場での信頼感や協力体制が格段に向上します。
理学療法士として医療介護福祉様々なフィールドで20年以上の臨床経験を持つ、Be a Smile代表の山田真伸が提供する研修では、多職種連携に関しての今回説明したようなコミュニケーションの実践的なスキルを、多くのワークを取り入れ楽しく身につけていただける内容をお届けしています。多職種連携の現場での課題解決に役立つヒントを、ぜひ皆さんと共有できればと思います。
あなたの現場に「聴いて・認めて・伝える」を取り入れる一歩として、まずは、「聴く」というポイントを試してみてください。
研修や講演のご依頼は、下記までお気軽にお問い合わせください。
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